きまぐれ日誌

　信号の無い川沿いの道を使って通勤している。
ところどころ道幅が狭くなっているため
対向車とのすれちがいが難しい時は車を寄せて譲りあう。
運転の下手なわたしはひやっとする事もあるが、
『譲ってくれてありがとう』のサインが嬉しかったりもする。
周りには田畑が広がり目にも心にも優しい。

　道の傍らと川縁（かわべり）には雑草がぎっしり生えている。
水辺のせいで昆虫や小動物に遭遇する事が多い。
夜は灯りが無いので、注意しながら走行する。
台風の時、雨の中をかえるが路面へぴょんぴょんと
出てきて何度も轢いてしまいそうになり閉口した。
最近では日中、赤とんぼの群れが空に舞い散っている。
その他にも、こじゅけい・亀・いたち？などなど。
　
　先日の夜、ラジオを聞きながら走っていると、
道の端の闇の中になにやら動めく気配がある。
ヘッドライトに映しだされたそれは
一瞬動きを止め光の方向を見る。
目が合った・・・気がする。しばらく見つめあってしまった。

たぬきだった。

『あ・逃げなくちゃ・・・』とやっと気づいたように
雑草の中に頭を突っ込んで行ってしまった。
向こうの方にももう一匹いたようで、
しっぽがシュルっと隠れた。
動物園以外で、生きているたぬきを初めて見た。
感動した。

　それにしても、危ない危ない・・・
こんなところに出てきたら轢かれちゃうぞ。
人間が棲みかを奪ったからだよね。
　ごめんね、車のライトで照らしちゃって。
ごめんね、こんな鉄のかたまりを走らせて・・・。

　『ただいま。　ねえ、さっきたぬきを見たよ。』